ときに桜の下で打ち鳴らしたり

春ですよ。季節は。ついにやってきましたよ。

先日、友人からお花見に誘われて、代々木公園へ行ったのです。
きっと人が多いのであろうなー、と漠然と思いつつ遅刻気味で向かうと、やっぱり人が多い!
人の多さもさることながら、それぞれがかもしだすアッパーな空気がすごい。まさに無秩序。

いや、分かってはいたんです。花見のハイシーズン、花見どメジャー一直線のヨヨコーならば、パーティーピーポーがドンツクドンツク(フゥー!)であろうということも。ただ、それが予想以上でした。園内は至るところ同時多発的にパーティーが勃発。八王子の川沿いでのんびりとした花見しかしたことない僕は、免疫がなかったのです。
人が多くてゴミゴミしてるとか、みんなが盛り上がってるとか、そんなことはここでは大前提で、いちいちそこを指摘するのは野暮なのでしょうね。

私たちは、ここに足を踏み入れた時点で、皆パーティーピーポーのパスポートを手渡されているに違いない。
「こんなナイスなパークに来る目的なんて、パーリーしかないだろブラザー!」
のんびり桜を愛でるなんて外道だし、前時代的な恥ずべき花見ですよ!よそへ行け!(被害妄想)

とはいえ、我々数名のグループは、それなりに牧歌的にやっていました。しかし、そんな例外はここで許されるわけはありません。
友人が持ってきていた、小さなおもちゃのピアノと、アコースティックギターが目をつけられます。
近くを通った陽気なお姉さん(ハーフの美人)が言いました。
「ヘイ!その楽器でみんなでセッションしようよ!」
僕は、首から下げたパスポートをそっと手で隠そうとしましたが、時すでに遅し、でした。

お姉さんはテキパキとコード進行を指導。そして我々が演奏。
「スタンド・バイ・ミー」「恋はあせらず」など、数々の有名曲を盛大に歌うはお姉さん。
歌うお姉さん、演奏する我々、集まる注目、集まる外人。イエス、ウィーアーザパーティーピーポー。
アコギやピアノ、ピアニカを奏でる友人たちは、突如始まったこのシチュエーションにも関わらずクオリティが高い演奏を披露し、僕は彼らを頼もしく思いながら見ていました。

ただ、僕は、何の楽器も持っていなかったのです!盛り上がりとは裏腹に、ただただ、ヘラヘラとして体を揺らすのみ。内心焦ります。「まずい、僕もパーティーのピーポーにならないと…」
パーティーの輪に加わりながら、パーティー指数0のダメパーティーボーイの烙印を押されてしまう!
歌うか? いや、まだ牧歌的な時代が忘れられない僕は、そのテンションに至ってはいませんでした。
スマホのドラムアプリを引っ張り出して、一生懸命叩いてみたものの、雑踏にかき消され、ただ虚しいだけ。そうこうしているうちに、お姉さんはもうこの日5回目の「恋はあせらず」を気持ちよさそうに歌うのです。

不憫に思ったのか、友人が小さなトライアングルを渡してくれました。短いバチで叩くと、チーンと澄んだキレイな音がする。これだ、これしかない。

僕が今課せられた命題は、リズムに合わせてこの三角を叩いてはミュート、ミュートしては叩くこと。
「ンッチッ、ンッチッ、ンチッチ、ンッチー。ンッチッ、ンッチッ、ンチッチ、ンッチー」
僕は叩く。ヨヨコー来てパーリーしないわけにはいかない。パーリーにはリズムが必要なんだ!
そう言い聞かせて、なかばやけくそで、一心不乱にリズムを刻む。刻むったら刻むんだ!




「ンッチッ、ンッチッ、ンチッチ、ンッチー。ンッチッ、ンッチッ、ンチッチ、ンッチー」
まだ肌寒い代々木公園の空に、歌声と金属音が響き渡っていきました―。

花見は八王子の浅川沿いに限ります。

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