違う、そうじゃないと言った僕の声は寒空に消えていった

こんばんは中塚です。

夜道におけるマナーを知りたい。

夜道で、自分の前を女性が歩いているとき、ふるまいに悩むことがある。
薄暗い道で、周りにお店も人通りもない。
今歩いているのは、僕と女性一人だけ、というシチュエーション。

気にしすぎかもしれないけど、もうこのシチュエーションになったとたんに
「ああ、俺今きっと不審がられてるんだろうな」と思ってしまう。
女性がこっちを気にして早足で歩いてる感じがしてならない。
紳士たるもの、夜道で女性を恐怖に陥れてるようなことがあってはなるまい。
そう、僕は夜道のマナーを知りたい。


こんな風に日ごろ夜道で悩んでいた僕に
決定的な出来事が起きたのは、ある寒い日の夜のこと。

午前0時過ぎ、僕は家の最寄り駅で電車を降り、
改札階へ向かうエスカレーターに乗ろうとホームを歩いていた。
ふと気づくと、僕の前にはひとりの女子高生が歩いている。
けっこう遅い時間だし、何となく気にはなったけど
サラッとそのまま流れで彼女に続いてエスカレーターに乗った。
今思えば、このとき既に彼女がこちらをチラチラ見ていたような気はする(悪い方のニュアンスで)。

エスカレーターは改札階に着き、改札を出る。
駅前は人もまばらで、同じ電車に乗っていたとおぼしき人たちが、小さなかたまりとして駅前に降り立ち、それぞれの家に向かって散らばろうとしていた。
僕も家に向かおうと歩く。小さなかたまりはたちまちにバラけて、周りにはほんの数人が歩くだけ。
ふと前方を見ると、歩く2、3人の中に、さっきの女子高生がいた。4、5メートル先くらい。
そのとき、何かの拍子に、彼女は一瞬こちらを振り返った。

このタイミングで、僕の頭には、
「不審者だと思われていたらどうしよう」と不安がよぎった。
思えば、駅のホームから進行方向が一緒だったので、
ずっと彼女の後ろを歩いていることになっている。
もちろん偶然なんだけど、これはまずい。

周りに歩いていた人たちもいつの間にやらいなくなり、気づけば僕と彼女の間には誰もいなくなっていた。心なしか彼女の歩調が早まっている気がする。僕は逆に距離をとるため、歩みを少し遅くしてみた。彼女の緊張感が伝わってくるような気がする。

「ああ、早く僕と違う方向に行ってくれないかな」。
追い抜くには少し距離があるし、それでスピード上げたらなおさら怖がられそう。
ここで僕が立ち止まってさっさと先に行ってもらったらいいのかな。
でもそれはそれで怪しいし…。
それに、本当に不審者がられていると、まだ決まったわけじゃない!
寒いんだしこっちだってさっさと帰りたい。

とかウダウダと考えながらなおも歩いていると、
次の角で女子高生は曲がっていった。僕とは違う方向だ。良かった!
ホッと安堵しながら、彼女が曲がっていった角にさしかかったので、僕は何となくそちらを見てみた。

すると、そこで僕の目に入ってきたのは……
全速力で走り去る女子高生の後ろ姿だった。

お茶を濁すような小走りなどではなく、まごうことなき全力ダッシュ。
僕が目を向けたその次の瞬間には、あっという間にさらに先の角を曲がって、
完全に視界から消えていった。
全力ダッシュ。それは僕に対する不審者の烙印。

おお、女子高生よ。怖がらせてしまったことについては謝る。
後ろからついていったつもりは毛頭ないけれど、そりゃただでさえ不安な夜の帰り道。
結果的に後ろからずっと歩いてついていったようなことになってしまったら怖いだろう。
しかし、おお女子高生よ。
僕が着けてたマスクとニット帽とちょっと暗めの色したアウターは、
あなたを怖がらせるのに十分だったかもしれない。
しかししかし、おお女子高生よ女子高生よ。

全力ダッシュで逃げられた僕はとにかく、鈴木雅之ばりに、こう伝えたかった。
「違う、そうじゃない」と。


ただしこの曲の歌詞の続きでは「君を逃がせない」と言っているので、こんなこと言っちゃったら女子高生にとってはさらに地獄だろう。

僕からにじみでる何らかのエッセンスが、夜道と混ざって恐怖を与えているのだろうか。
そもそも男性ならみんなこんな感じで怖がられるもんなのか。気になる。
もし、僕が日頃(たまにですよ)考える、あんなこんな良からぬこと。
そんな思考がイヤホンの音漏れみたいに、周囲にちょっとずつ聞こえているのだったらどうしよう。
そうだったら、夜道だろうと昼間だろうと、逆に僕が歩けなくなる。怖すぎる。

とにもかくにも、夜道のマナーを教えてほしい。誰か、お願いします。


いろんなことがあるけど、空には星がきれい…。



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